「特開2045-34987」 (契約 物語3) NO.3 written by eConomy up 17.July.2009
「特開2045-34987」 (契約 物語3) NO.3 written by eConomy
「そう、ユイは行くと思ったわ。」
恋人の女は動揺なく答えた。
「あなたはもう、ここには戻らないのね。」
「戻るわよ。2年契約だもの。それに3千万以下だと私はお断りとしたし、お話が成立せず、ピアスと印のみ付けて戻ってくるかも。」
ユイは70%以上の結果を言った。
「気づいているでしょう。あなたはきっと奪い合いになるわ。お金なんて、たぶん、その倍は付くわ。・・・気づいているでしょう。」
ユイは顔を傾げる。
「ユイ。あなたの心は男を待っている。しかも、・・・。まぁ、いいわ。可愛がってもらえるわよ。・・・悪い男に当らない事を祈るわ。」
ユイは恋人に抱きつく。
「ありがとう。気づいているの。そう、もう戻れない。・・・でも、それでも・・・。」
ユイは泣きながら、別れを言った。
恋人は今日が最後になるだろうユイの身体を強く抱いてやるしかない。
翌日午後、ウィリアム・ジャパン病院にユイは向かった。
この病院は唯一つの受診科目しか持たない。
「ピアス科」がそれである。
5階建ての建物はクローン女性達で溢れ返っていた。
既に5万件以上のピアス手術をこの病院が行っている。
他の病院では、ピアス価格が特許の関係で5割増しとなるため、今は主要都市に出来た市場の周辺にウィリアム・ジャパン病院は3つほど建っていた。
市場は簡単に造ることが可能で、ここ数年の間に既に20都市で出来ていたが、病院は現在の施工技術をもっても1ヶ月を要するため間に合わない。
ただし、土地の問題が大体の事なのだが・・・。
ウィリアム・ジャパンは市街地に土地を購入し、各都市に病院を建てる計画である。
手術後、3日は所謂、術後期間で身体を休める。施設にいても、病院にいても良いが、病院からはバスが市場に運行されている。このため病院に残るものも多い。
このバスで運ばれる「美女の群れ」には幾つか別称が付いたが、一番好意的なものでも「三十路バス」、悪意に満ちたものでは「女肉運搬車」であった。
ユイは「女肉運搬車」に揺られている。
しかし、気持ちは晴れ晴れとしていた。(どんな方にお仕えするのかしら。・・・その前に3千万。・・・アァ、オッパイが揺れるたびに感じちゃう。)
その顔はいつかのサクラと同様である。
この時点でユイには120万の借金が生まれていた。(AF03585がユイの赤外線で付けられた一生取れない印である。)
つまり、もう30万を超えるクローン女性が市場に立ったことになる。
短期間、・・・特許成立後わずか3年3ヶ月。病院、特にウィリアム・ジャパンの株は市場に立つクローン女性の数に比例し暴騰し、100倍の50万ほどになっていた。
その株で儲けたものが市場でクローン女性を漁っている様な現状である。
(自然、その株が上がると考えた人間はその趣旨を理解したもので、サクラの様に前もって付き合い、市場に立たせ、自分が競り落とすことを打ち合わせた出来レースも少なくない。)
ユイが役所の女性事務官と面と向かっている。
「ユイさん。宣誓をお願い致します。」
それは病院で既に教えられたことである。
全ての段取りのケアは病院の義務でもあった。
「はい。・・・宣誓、クローン・ユイは日本国法の全般を理解し、この第1市場132Bの4に自らの意思により規定に従い参加することをここに誓います。」
「ありがとうございました。先ほどの宣誓以後は録画・録音されています。これはあなたの意思と命を守るためです。承知頂いておりますね。」
「はい、承知致しております。」
「では、病院の証明書と失礼ですがこれよりは衣服の着用は認められておりません。お願い致します。」
事務官の居る前に手術証明を出し、後ろ向きになって、軽装を脱ぎ捨てた。ブラジャーとパンティーはもう着用できない身体のユイが事務官の前に戻ることに3分しか要しない。
「申し訳ありません。ユイさん、一度、立って下さい。」
ユイが立ち上がる。
「失礼します。」
事務官の指がピアスがしっかり肉に埋め込められたものか、引っ張って確かめる。
「ウゥー。・・・ハァー。」
ユイの喘ぎは事務官には珍しいものではない。
最後にクリトリスを貫通するものの両端からクリトリスのみを摘み、その繊細な神経を持った部位に付けられたものかが確認された。
「ア、ア、・・・モットォ。」
指はクリトリスを離れ、ユイの言ったことは聞こえなかったことにされた。
「はい、完全です。では、市場での取り決めと金額が決定し、負債額との差し引きに・・・・・。」
ユイは市場の控え室に居る。
(何、あの快感。気をやった・・・かしら。意識を少し失ったのは間違いないけど。私の身体は誰に同じことをされてもイッテしまう。)
同じ手術が施されたものが5,6人裸でポツリ、ポツリといる。中にはモニターで市場の具合をずっと見ているものもいた。
たぶん、男と示し合わせがあるのだろう。
今日は比較的若いクローンが多いらしい。25を超えたものは居ないに違いない。
そのためか、1千万/年以上が続出し、市場は活気に溢れている。
ずっと、モニターを眺めていた「女」の順番になった。
「エントリー11番 サヤカさんです。お歳は21歳。5年契約をお望みです。サヤカさん、中央にお進み下さい。」
決まった通りの紹介でサヤカと言うらしい「女」が中央に出て、一礼をした。
腕を横に上げ、少しずつ足を開く。
「買い手」側からは望遠レンズ機能があるため、細かい部分もチェックできる仕掛けである。
「さやかさん。結構です。ソファにお座りになって、足を手で抱え持って下さい。」
女の全てがアカラサマになる格好を司会は上品に促した。
「ご苦労様です。では、皆様、金額をお入れ下さい。」
ここにいる全ての「買い手」は買値を入れる義務がある。
そして、金額と共にそれをまだ上げる意思があるかを赤と緑のボタンで選択する。
緑が3人で3000万円、後は1000万円で赤である。
赤は打ち止めであった。今回の「セリ」の中では異常な低金額と言えた。
「緑が3人、3000万円です。次の金額をお願い致します。」
あっという間に型が付いた。5000万の赤が一人。他が4000万の赤。
「ハイ、決定致しました。K.M様に決定。5000万です。サヤカさん、金額は・・・1億ですね。どういたしましょうか。」
サヤカと言う「女」はずっと鏡越しのK.Mと言う男を睨んでいた。
きっと、1億の約束があったのだろう。
「拒否します。」サヤカは悔しさを滲ませ言った。
「拒否です。5000万のお客様、判断をお願い致します。」
赤のランプが点灯から点滅に変わる。つまり、値上げの意思はないことを示す。
これで1年1000万が確定し、後は拒否か受け入れるかのサヤカの判断しかない。
「サヤカさん。拒否でよろしいでしょうか。」
「・・・・・。」
「はい、拒否ですので、今回は・・・。」
「待ってください。受諾します。」
「サヤカさん、5000万でよろしいのですね。」
涙交じりにサヤカが首で承諾を示す。
「はい、5000万決定です。サヤカさん、ご苦労様でした。入ってきた逆のドアからご退出下さい。」
明らかに出来レースなのだろう。
ピアスの効果を知っている両者は、金を出す側が勝つ。
きっと愛しい男の裏切りなのだ。ここで拒絶すれば「女」は行き場がなくなる。
サヤカの非難の声をピアスが止めてしまったに違いない。
いよいよ、ユイの番だった。
up 27.July.2009
「エントリー14番 ユイさんです。お歳は22歳。2年契約をお望みです。ユイさん、中央にお進み下さい。」
ユイは恥ずかしげに顔を落として、中央に進む。小さなお辞儀、その後、サヤカの手順と同じ事を行い始めた。
両手足を広げる。
明らかに愛液で濡れ、それは足を伝わっていた。
顔が少し上がり、虚ろな表情に色気が見える。
次のソファへの移動の際、司会の案内は3度され、目的のソファに上がり、足を持ち上げた。
ユイは初めて自分が濡れていることに気付く。
顔が赤く染まり、下を向き目を閉じてしまった。
「ユイさん。ソファにお座りになって、足を手で抱え持って下さい。」
司会に「不十分」である内容を告げられた。
足はゆっくり広げられ、手が添えられる。銀のピアスがAF03585の下、手術のため剃毛された後で濡れそぼって見える。
(買ってぇ。私を買ってぇ。)下の口が大声を叫んでいるようである。
「ご苦労様です。では、皆様、金額をお入れ下さい。」
「本命」だったかの高額が並ぶ。
5000万を筆頭に3500万までグリーンのランプが全て付いている。
「え〜、皆様。現在5000万が筆頭で皆様、緑。では、2度目のご記入を。」
打ち合わせな様なものは感じられない。ユイの2年は間違いなく誰かの手に落ちるだろう。
5000万以外は全て金額を上げてきた。16人の買い手でギブアップは8名。
6000万で赤4人。緑が3人。最後に金額を入れたものは8000万円の緑。
ユイを落としたい緑はまだ4人残った。
タバコの煙を吐きながら、余裕でユイを見ている男が最初の5000万円。
(あの人に抱かれる・・・。奴隷になる。)
ユイの願望は実現しようとしている。(奴隷。男の方の奴隷・・・素敵じゃない。受け入れることのみ許される。何をお求めですか。)
ユイと男の目が合った。
(ふ、ふ、何をお望みだい。)確かに男の声を聞いた気がする。
(す、全て受け入れます。)
ユイのヴァギナが白い液体を吐き出した。
「この赤は取り消せるか。」マイクで1人の男が司会に聞いた。
今までになかったことだが、司会は厳粛に答える。
「赤は取り消せません。4人の緑の方がございます。最高は8000万。では、もう一度お願い致します。」
1億で2人赤、緑1名。例のたばこの男は1億2千万まで一気に上げ緑である。
「年単価6000万。本日最高金額。まだお二人の緑がございます。次をどうぞ。」
あっけなく型がついた。タバコの男は1億5千万にし、緑である。もう一人は1億3千万の赤。
「1億5千万となり、緑のS.S様に決定です。ユイさん、ご希望の5千万は大きく上回っております。しかも、年7500万の2番目の金額。そして、相手様は緑です。問題はありませんね。」
「・・・。」「問題はありませんね。」
司会が繰り返した。
「あのぉー、最高はユリさん、この市場に出られた女優のユリさんは年1億でしょうか。」
ユイは自分の価値を確認したい。それ以上ならこの人のために、今、死んでも良いと思い、男の顔を見つめていた。
男はタバコを咥え、余裕で煙の行方を追っている。
「左様です。今までの金額でそれを上回る方はありません。」
「・・・では、申し訳ありません。2億1千万をお願いします。」
司会が戸戻っている最中、男は苦笑いを浮かべながら、ゆっくり2億1千万を打ち直し、赤に変えた。
「えー、2億1千万です。歴代最高額。おめでとうございます。ユイさん、では出口よりご退出ください。」
ユイの口のみが動いた。(あなたのためなら死ねます。)
男は理解したのだろう。手元のワイングラスをユイに向けて上げた。
ユイは控え室で契約書にサインした。
それは一番最初の女優のユリのものと内容は変わらないが金額の欄は史上最高額であり、マスコミも市場でのユイを報道するだろう。
「すごいわねぇ。2年で。私なんか一生働いても無理。」
先ほどの事務官の女が目を見張り、その金額を何度も確かめる。
人の良さそうな事務官はその後付け加えた。
「でも、大変よ。」
そうだろう。それでは言葉が足らないほど大変であろう。
2億1千万円の小切手がデスクに届いた。初めてユイを「買った」男の名を知る。しかし、その名は呼ばないに違いない。
ユイは頭の中で反芻し、記憶に留めるだけにした。
「では、最終確認です。この小切手は既に現金化できる事が、当局により確認できています。従って、あなたの最終意志表示としての契約書へのサインにより、当局が法により、この金額を保管し、いつでもあなた自身確認できるようになっています。ただし、あなたの場合、本来2年と1ヶ月手前後よりとなりますが。確認方法はこの契約書とあなたのお臍の下の印です。おなたご自身がどこの役所に何も持たず来て頂いても結構です。方法は申しませんが、あなたが役所にいらっしゃった時点で当局では確認が取れます。」
「続けます。お金の確認はそれでOKですが、お金の引渡しは基本的に40歳を迎える1ヶ月前までできません。ただし、ご本人の事情で「当局が認めた際」、「預かり金」・・・と呼びます。30%までは次のサイン以後、何時でも払い出し可能です。えーと、6千万以上になりますねぇ。もう一点の確認と言うほどのものではありませんが、それはサイン後に。」
ユイは契約書をまた見た。驚くべき金額である。2億に変わる、2年とは何か。
(確信したんじゃない。命も差し上げますとも誓った・・・。)
3枚の契約書にサインは成された。
「契約成立です。1枚は当局、後1枚ずつは契約者それぞれに。最後の1点について。この契約はお解かりの通り、危険なものです。最後に3日間、自宅、或いはこちらから連絡の取れる場所であなたは考える時間を持てます。」
ユイはそのまま病院に戻った。もう、施設に戻って、「恋人」には会いたくはない。マスコミもいるかもしれない。
その点、病院は静かに自分の気持ちを再確認できる場所である。費用は手術し、市場での契約の終えたものには個室も与えられ、必要なかった。
(お金は得たわ。あの女優さんより、「私は高い。」つまり価値がある。男性には好ましい・・・。私はいつも待っていた。私を必要とする男(ひと)を。私を女として扱ってくれる方。お金で買われた娼婦。もっとよね・・・奴隷。・・・私は待っていた。私の細胞一つ一つは全ての女性より高価。私は全てを受け入れられる人(女)の分身。・・・私の価値はこの国で一番。・・・日本一の女奴隷。)
ユイは22歳。まだ、その命は80年も続く。ただし、女であることは後20年。クローンの定めである。
幾人も見てきた。35を超えると女であることを捨ててしまうクローン。
(子供が欲しい。)ユイの誰にも言ったことのない欲求。
そのこと自体、他のクローン、誰からも聞いたことがない。
(もしかしたら、叶うかも。・・・愛されたら、従順なら、牝奴隷のように全てを受け入れたら・・・、あの方は罪を一緒に背負って下さるかも。)
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